当社では、随分前から「ダイバーシティ経営」に取り組んでいます。
ダイバーシティとは、多様性という意味で、ダイバーシティ経営は、「企業が多様な人材を活かし、能力を最大限発揮できる機会を提供することでイノベーションを誘発し、価値創造を実現する経営手法」(経済産業省)と定義づけされています。
取り組み始めた約10年前には、ダイバーシティといっても、東京のお台場の事だとしか思って貰えないこともあったくらい、あまり日本では馴染みのない言葉でしたが、最近は、働き方改革と相まって、経営の手法として広く知られるようになってきました。
しかし、現在に於いても、多くの経営者にとっては、経営を圧迫するモノという見られ方をしており、「そんなのは大手で金のある企業のやること」と思われている現実があることも確かだと思います。
しかし、当社ではこの経営手法を戦略的なものと捉え、実際、現在の当社の組織形成や新製品作り、マーケティング戦略やビジネスモデルの構築に、無くてはならないものになっています。
実際に行っている中身は、NHKの「ルソンの壺」や幾つかの民間放送局でも紹介されたことがあるので、ひょっとしたらご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、「小学3年生以下のお子さんがいるか、同居か否かは問わず第3親等以下の家族に要介護者がいる社員への30分単位でいつでも取得可能な休暇(中抜けもOK)」「1/4単位で取得できる年次有給休暇」「有休とは別に付与されるプレオフ休暇」「子供手当の充実」「倫理委員会」「こまめな社内規定の改定」「施設の整備」といったところではありますが、社員の要望や状況によって現在進行形で常に進化させています。
30分単位で遅く来たり早く上がったり、途中で抜けたりすることのできる休暇は、例えば夕方に保育所から「○○ちゃんがお熱を出したのでお迎えに来て下さい。」といった連絡が入ったら、そこで早く仕事が終われる、といった制度で、基本給の基本であるところからその方の30分単位の給与を割り出して差し引くというもので、いわゆる有給休暇ではありません。ただ、加給や手当は全くそのままで、原則1日4時間以上就労してもらえば、賞与の対象となる日数も翌年の年次有給休暇の算定となる日数も1日として扱います。
実は、当社のこの制度を過去に最も利用した社員は男性で、2番目も男性です。
毎年の会社説明会の時、この話をすると、結構食いついてくるのはむしろ男子学生です。男女共に学生に子育てのイメージは全くないでしょうが、社員を大事にしてくれる企業、というイメージにつながるようです。
こういった取り組みをしてから、途中退職者が減りました。以前は、新入社員が5年もすると2.3割しか残らない会社でしたが、最近はほとんど残ってくれるようになりました。
会社の悪口や上司の悪口をいう人も減ったようです。
よく、お客様や協力企業の方から、「富士電子の社員さんは会社のこと好きだよね。」といわれるようになりました。
ダイバーシティに関して、経済産業省の「新ダイバーシティ企業100選」や、私自身も「男女共同参画社会づくり功労者内閣総理大臣表彰」を受けていますが、それにも増して、外部の方からのこういった言葉が最も嬉しく、励みになっています。
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