(平成17年7月)No.57
理事長就任の挨拶

 
 
西部金属熱処理工業協同組合 理事長
  安永 昌行
(東伸熱工(株)代表取締役社長)
 
 
 

 この度、川嵜理事長の後任とし、各理事の皆様からご推挙を頂き、私が理事長を拝命いたしました。

 「信頼」を基盤に、今日まで躍進を続けてまいりました歴史ある当組合の理事長という大役を、お受けすることについては、大いに戸惑いがございます。

 歴代理事長のご指導で、当組合がこれまで積み重ねてまいりました活動の成果を引き継ぎ、強調の精神をもとに、『業界の社会的・経済的地位の発展・向上を目指す』との指針に沿って、引続き取り組んで行くことが、与えられた任務と考えております。

 各理事の皆様から、適切なご指導をいただきながら、更には組合員、賛助会員皆様方からも、従来通りのご協力を頂きたく、併せてお願いいたします。そして、その活力を組合のエネルギーとして活用させて頂き、ご期待に充分応えられるよう、微力ではありますが、全力を挙げて取組んでいく決意でございます、何卒、今後ともご指導賜りますようお願い申し上げます。

 なお、末筆になりましたが、前、川嵜理事長様におかれましては、2期4年の永きにわたり、大役を果たされました事に深く敬意を表しますとともに、厚くお礼を申し上げます。



和  鉄

日本電子工業株式会社
常務取締役 松本 清二

 先日、某大学の教授にお会いする機会があり、面談後、お暇する時間に教授より一冊の専門書を差し出され、見て少し驚いたのですが、刀剣の鑑定書(村上孝介先生)でありました。事前に私の趣味をご存知だったわけです、但し見せて頂いた鑑定書は、相当レベルの高い専門書だった為、自分の鑑定レベルを説明するのに、相当汗をかきました。又時間の許す限り、お互いの専門知識を忌憚なく発言できた事を、たいへんうれしく思い、ご指導の中から大変な熱意を感じ取りました。

  お金があれば立派な刀剣美術品が買える時代であるが、刀剣の中身である、作者、年代刃中の動き、等を知る、真贋の目を養ってこそ、その時代の背景と、刀匠にたいする想い、また、現代に残された美術品としての、本当の扱いが出来るのではないでしょうか。

  実用時代は道具としての見方、しかし作者(刀匠)は後世に残る美術品としての価値を踏まえて、 −1− 作刀されたのは事実である。

  余談であるが日本刀は、製作された時代によって、古刀、(794〜1596)平安〜安土桃山新刀、(〜1781)慶長〜江戸時代末、新々刀(1781〜明治5年廃刀令)それ以降を現代刀と呼ぶ文献上では、奈良時代にさかのぼる刀鍛冶も見られますが、在銘正真の作から推して永延(987〜989)のころとされる山城国(京都府)の三条宗近が最古期の鍛冶とおもわれるでしょう。

  日本刀は玉鋼で作る(和鉄の追及)
  なぜ玉鋼なのか、それは、世界で最も純粋な鋼だから、玉鋼はタタラ(蹈鞴、鑢)製鉄という古くからのやり方で製造することも、よく知られています。

 玉鋼がいかに優れた鋼であるかは、科学的な分析によっても証明されています。現代の工業では、いったん製造した銑鉄から不純物を取り除く処理をしますが、タタラでは初めから純粋な鋼を作ります。前者を間接製鋼法、後者を直接製鋼法といい、直接製鋼を目的とするタタラは世界の製鉄史の中でも、きわめて特異な存在です。それには、まず不純物の少ない原料を使います、全国に豊富にある砂鉄はその条件にかなっており、中でも奥出雲(島根県)の真砂は優良です。次に、精錬に使う燃料も不純物の少ないものでなくてはいけません。硫黄分などを多く含むコークスではなく、昔から木炭を使ってきたのはそのためです。

  真砂(黒色で光沢があり、粒形も大きい、燐や硫黄、チタンの含有が比較的少なく品位の高い磁鉄鋼である。)

  教授との鑑定談義のなかで、鑑定の最も重要なポイントの中で、刃中の働きをどこまで見極められるか、真贋を磨く一番むずかしいものがあります、失礼ながら意見が一致いたしました。 「参考、刃中の動きの例」 文献から出てくる名称

  ――焼刃境の粒子が肉眼でとらえられ、星のようにキラキラと輝いて見える
  ――粒としてはとらえられず、天の川のように白くかすんで見える
  (沸、匂も、我々の世界では、マルテンサイトやトルースタイトと呼ばれる炭素を固溶した硬い組織である。)

  金筋、稲妻刃縁や刃中にあって周囲と異なり、黒く光輝いている直線状のものを金筋(金線)と呼ぶ屈折しているものを特に稲妻と呼ぶ、これらは地の部分ではしばしば地景となって現れる。(最業物の特徴)など等を教授より、角度を変えての見方をご指導受け、価値ある一日をひさしぶりに味わうことが出来ました。

 
 
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