(平成15年4月)No.47

思い遺りの言葉

 
 

光洋熱処理株式会社
代表取締役社長  武藤 哲男

 
 
   毎年恒例の春闘も終わり、いよいよ新年を迎え、新入社員を迎える季節がやってきた。新入社員を迎えるに当り、毎年改めて「自分の子供」を見直すような「気分が改まる」ものである。
 日本では「おはようございます」から「おやすみなさい」までの1日の中の決まりきった挨拶言葉や「何時もお世話になっています」「毎度おおきに」などの商売上の挨拶言葉以外に、気候・季節に応じた「お寒うございます」「暑いですね」などの挨拶言葉や「お元気ですか」「お疲れ様」などの相手を気遣う挨拶言葉などがあり、地方により様々な言葉で表現されている。この挨拶が人と人とのコミュニケーションを創り・高める基本的で最高の道具であることは古今東西共通するものであるが、日本人が交わす挨拶言葉には「思い遣り」の気持ちが込められており、日本人の何とも言えない機微を感じさせるものである。
 処が、最近の若い人は(と言えば「年寄りの・・・」と言われるが)ごく当たり前の「おはようございます」さえも言わない・言えない人が多い。さらに言えば若いとは言えない人でも挨拶が少なくなっている。その原因が家庭教育に在るのか学校教育に在るのかを此処で論議するつもりは無い。しかし、挨拶が少なくなっていることは事実であり、その現実を認めた上で「挨拶」と言う基本行動を根付かせ、より良いコミュニケーションを図ることが今の社会に最も求められることである。
 挨拶は単なる形式的なものでなく、動物でも声の出し方・種類を変えて相手や集団とのコミュニケーションを図っていることを考えると、高等動物である人間はより高度なコミュニケーションを図るために色々な意図を持って挨拶を交わさねば,より良い人間社会を築くことは出来ない。この色々な意図とは、互いに仲間として意識しあったり・相手を気遣ったり・互いに励ましあったり・元気付けたり・慰めあったり・尻を叩いたり・感謝したり等など枚挙に暇が無いが、その挨拶の中に相手に対する「思い遣り」の気持ちが無いと自分の意図は決して伝わらないものである。人間は一人で生きていくことは出来ないもので、生から死までの間に何万人もの人々と係わり・支えられて生きていくのであって、お互いに「思い遣り」と「感謝」の気持ちを持ち合って初めて旨くいくものである。
 この挨拶をしない・出来ない状態を打開するには、おのおのの企業人/社会人が自分の責任だと思うぐらいの気持ちで挨拶を定着させることが最善の策と考える。即ち、ひとつの企業と言う小さな社会の中で、一人一人が「思い遣り」を込めた「挨拶」によってコミュニケーションを深め、活力ある・明るい社会にすることを責任を持って進めることが必要である。
 日本の景気は底這い状態が続いて明るさが見えないし元気が無いが、企業は人間の集団であり集団に所属する人々の活力・明るさがあれば、企業も活力・明るさが出てきて発展するものと確信する。その最善のの道具が「思い遣り」のある「挨拶」だと考えれば、そうそう気を張って取り組まなくても気楽に・気長に取り組めば、われわれの企業も社会もきっと発展すると確信する。
 このような確信を持って新しい気持ちで、次代を担う新入社員を迎え、育てていきたい。
 
 
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